国際仏教学大学院大学
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    第3回公開研究会発表要旨


青木 進 (国際仏教学大学院大学 学術フロンティア研究員)

 『木槵子経』と 『木槵経』

 仏教の数ある法具の中で最も身近な存在である数珠。この数珠について説いた経典が『大正新脩大蔵経』一七巻に収録されている。寶思惟訳『仏説校量数珠功徳経』、義淨訳『曼殊室利呪蔵中校量数珠功徳経』、不空訳『金剛頂瑜伽念珠経』、そして『木槵子経』である。
 『木槵子経』は東晋代の失訳経と見られ、内容は、仏陀が難国の波瑠璃王の求めに応じて、木槵子(ムクロジ)の実で作った数珠の修行法と功徳を説くものである。木槵子一〇八個を貫いた数珠を常に身につけ、仏法僧の三宝を称賛するごとに実を一個繰り、これを百万遍繰り返せば、一〇八の煩悩を滅し、涅槃に到逹すると説いている。
 この『木槵子経』は高麗蔵の東晋失訳本を底本とし、仁和寺蔵『三十帖冊子』に収録された不空訳『木槵経』を異本として校訂に用いて一本としている。同じく『大正新脩大蔵経』の『貞元新定釈経録』巻二十九、巻三十の入蔵録を見ると、小乗部に失訳『木槵子経』が、大乗部に不空訳『新訳木槵経』が記載され、二本あることがわかる。
 『木槵子経』を日本の古写本に求めると、七寺一切経では失訳が一本、不空訳が二本現存し、同じく七寺本の『貞元新定釈経録』巻二十九、巻三十の入蔵録では小乗部に失訳『木槵子経』が、大乗部に不空訳『新訳木槵経』に加えて『木患子経』が記載される。
 この様に『木槵子経』に対する諸本や経録の記載は統一されていない。この問題にについて、宋版、元版、明版などの刊本に加え、二本の古写本である三十帖冊子、金剛寺本、七寺本、などの写本と『法苑珠林』等の引用を参考にして、『木槵子経』について考察する。
  
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