国際仏教学大学院大学
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    平成19年度第3回公開研究会 発表要旨
 
箕浦 尚美(国際仏教学大学院大学 学術フロンティア研究員)     
金剛寺蔵佚名説話集に引用された経典の考察
 大阪府河内長野市金剛寺で、12世紀末頃書写と見られる題名不明の仏教説話集が発見された。その概要は、拙稿「金剛寺蔵〈佚名孝養説話集抄〉について」(平成15~18年度科学研究費補助金基盤研究(研究代表者落合俊典)研究成果報告書『金剛寺一切経の総合的研究と金剛寺聖教の基礎的研究』第一分冊、2007年3月)において紹介したが、所収説話はいずれも、幼くして親を亡くす天竺の子供達の物語で、それが釈迦とその家族等の前世の物語として本生経(ジャータカ)風に記されている。各説話には、出典として経典名が記されているが、インドや中国で編纂された現存経典には同内容を確認できない。一体何を利用して編纂されたのだろうか。
 例えば、「往生仏土経説」として示される早離と速離という兄弟の物語は、日本撰述の偽経とされる『観世音菩薩往生浄土本縁経』の類話であるが、詳細は異なっている。また、他に、「吉祥天本縁集功徳本起経」「悔罪生天経」などが出典として示されている。
 本発表では、所収説話と本生経類との違いを検討し、日本で作られた経典(物語)である可能性を検討したい。本説話集は、日本における偽経の形成や変容を解く手がかりとなるかもしれない。

  
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