国際仏教学大学院大学
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    平成19年度第3回公開研究会 発表要旨
 
上川 通夫(愛知県立大学教授)
「東アジアの大蔵経世界と日本中世一切経」
 日本史学の立場から、文献史学の方法により、日本中世の一切経の歴史的特質を考察する。経典思想の内実や実物経典の形態を考察する研究に比べると、外在的であると思う。ただ、特徴ある日本中世仏教が形成される歴史的必然性を、社会史的・国家史的な条件のもとでの意志ある人間の選択的行為と見て、その実相に近づいてみたい。
 日本の一切経書写史上、12世紀は一大隆盛期であると指摘されている。私見では、12世紀前半が日本中世仏教の成立期である。日本中世仏教は、汎東アジア性をまといつつも、内実に独自性が加えられている。その一つの表れが、版本の権威性を下敷きにしつつ、書写にこだわって作成された一切経であり、結縁・勧進形式で作成することで、その社会性が確保された。宋本(唐本)に対する、この期の「本朝一切経」には、大蔵経の共有で成り立つ東アジア世界における、日本の歴史的位置がよく表れているように考えられる。
  
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