国際仏教学大学院大学
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    平成19年度公開シンポジウム発表要旨 
    
   落合 俊典(本学教授)
     
漢訳仏典研究の新たな視座―日本古写経のデータベースとSAT&CBETAの利用―
 
 漢訳仏典、とりわけ一切経の文献学的研究は、高麗版等の刊本大蔵経と聖語蔵の校訂作業を経て完成した『大正蔵』100巻の刊行とともに終焉したかに見える。一方、禅・浄土等の章疏類文献の研究は、敦煌本を中心とした研究が隆盛をみて今日に至っている。
 ところが『大正蔵』の校訂に取り上げられなかった平安鎌倉写経の調査研究が進展すると、誤写を多く含むマイナス面が存するとはいえ、「一字千金」の古形態を残している資料であることが分かってきた。つまり、隋唐仏教文献の、忠実な或いはやや忠実な写本が日本の古写経ということである。高麗版等の刊本大蔵経には厳密な文字の確定がなされたプラス面があるものの、当時の価値判断をもって整理統合が行われたために、かえって原文を損なってしまった一面も見られる。かくして新たな校訂研究が求められるようになってきた。
 『大正蔵』のテキスト化に取り組むSATおよびCBETAの活動は眼をみはる成果をあげてきたが、特に検索の便は研究者に限られていた一字索引、コンコーダンス作成の労力を省き、万人が語句の用例集を作成できる段階にまで達してきた。
 このような高い利便性をもつSATおよびCBETAを活用して、日本古写経のデータベースを加えた新しい大正蔵、“21世紀大正蔵”を編集する準備委員会を作らなければならない時期にきたと思われる。
      
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