国際仏教学大学院大学
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    平成21年度第1回公開研究会 発表要旨



坂本 昭二(龍谷大学 古典籍デジタルアーカイブ研究センター研究員)


           金剛寺所蔵古写経『大宝積経』の料紙分析

 大阪河内長野の天野山金剛寺には中世に書写された経典『大宝積経』が所蔵されている。この経典の特筆すべき点に、経典の料紙が宿紙であることがあげられる。宿紙とは一般的には使用済みの紙(反故紙)を漉き返した薄墨色の再生紙のことをいい、金剛寺には『大宝積経』以外にも宿紙が使われている経典が多数所蔵されている。これ程の大量の宿紙が残されていることは非常に珍しく、金剛寺所蔵の『大宝積経』105巻分に限っても約1,800枚の宿紙が現存しており、全120巻からなる『大宝積経』の完成に要した全料紙の枚数となると約2,000枚に及んだことであろう。本発表では、まず、デジタル顕微鏡を用いた料紙の表面観察による原材料の同定の結果、原料として楮、稲藁そして反故紙が使われていたことを示す。また、紙を漉いた際に残る痕跡を観察し宿紙の表裏に関する特徴を紹介する。次に、金剛寺所蔵の『大宝積経』に使用された宿紙全体の傾向を調べるために、デジタル画像および比較的簡単に撮れる透過光画像を用いて、紙の色、漉き方、簀の目、地合について調査した結果、これらの宿紙が数種類に分類できることを示す。
 
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