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    平成26年度国際シンポジウム発表要旨

赤尾 栄慶(京都国立博物館学芸部 上席研究員  京都大学大学院 客員教授) 


重要文化財、「在家人布薩法巻第七」について
―書誌学的観点から―
 

 「在家人布薩法巻第七」(重文、個人蔵)は、伸びやかで力強く、端正な字すがたで書写されており、書写年代は奈良時代と見て間違いない写本である。原表紙を伝え、首尾も完存しており、表紙と第一紙の継ぎ目には「東大/寺印」が捺され、尚かつ、他の伝本が確認できない写本でもあったと考えられる。おそらく、これらが評価されて昭和十年(1935)に重要文化財に指定されたものと見られる。
 首題は、「在家人布薩法巻第七」とあり、続いて
  序一
  略意二
  前方便三
  正行事四
  後方便五
との標挙があるが、残念ながら撰述者名などは記されていない。尾題も首題と同じく、「在家人布薩法巻第七」とあるのみである。布薩とは、僧伽の中で半月ごとに集まって戒律の条文を誦して、互いに自らの罪過を懺悔する儀式を指すことから、これが戒律に関する内容の典籍であることがわかる。
 既刊の「正倉院文書」によれば、天平神護三年(767)二月二十二日類収の「一切経本目録」に「在家人布薩法経一巻」(『大日本古文書』巻十七、六十一頁)と見えることから、これと本写本が同じ内容の典籍かと推察される。
 書誌学的事項については、外題部分に少し欠損箇処があるものの、横の大きさが19.0㎝の原表紙が伝わっており、本文は全体が十三紙、一紙の平均的な大きさは縦が26.4㎝、横の大きさが45.7㎝となっている。一紙には二十五行が書写され、一行の字詰めは写経の規格に則って十七字となっているが、処々に割り注形式で注記が挿入されている。料紙の色はうすい褐色を呈し、漉き目の細かい上質の料紙が用いられている。しなやかさと力強さを合わせ持つ字すがたは、非常に優秀なものであり、料紙の風合いも勘案して書写年代を推定すると、奈良時代でも前期のものと見たい。
 以上、書誌学的観点を中心として「在家人布薩法巻第七」(重文、個人蔵)の解説を試みることにする。



  
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