国際仏教学大学院大学
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    平成20年度第1回公開研究会 発表要旨



江南 和幸(龍谷大学 名誉教授)


 アジアの紙の起源を中国・中央アジア伝来仏教経典、古文書に探る

  紙は鉄器と並んで人類に文明をもたらしたもっとも重要な発明のひとつである。20世紀初頭、清朝の衰退に乗じる形でフランス、イギリスなどヨーロッパ各国、少し遅れて西本願寺22世門主大谷光瑞、による中国・中央アジア探検が行われた。これらの探検隊が将来した膨大な仏教経典・古文書は、その後の古代・中世アジア史、仏教学の研究を大きく塗り替えるものであった。同時にこれらはまた紙の歴史をしるす貴重な宝物でもある。龍谷大学では探検隊の収集品である大谷コレクションに残された経典・古文書の紙を科学分析の手法を通して研究を行い、中国に始まる紙の歴史を明らかにしようと試みている。
 紙は最初古布、網のぼろなどから作られたとされている。コレクションの中の紀元328年の記年のある李柏文書をはじめ、687年の記年のある唐時代の古文書まで長期間にわたり同様な方法で作られていたことが判明した。唐時代の経典からは大麻、苧麻繊維を用いた用紙、楮などの木材の靭皮繊維を用いた現代に通じる本格的な用紙が見出されている
 唐の衰退とともに、紙の原材料に大きな変化が生じ、五代時代の経典には、竹、稲藁を用いたごく初期の紙が見出された。現代の中国の紙の大半を占める竹紙、稲藁紙はここに始まったのである。さらに驚くことに、辺境とされるウイグル民族が独自にアシを原料とする紙を発明していたことが2000点におよぶウイグル古文書断片の中から見出された。このように、紙作りの技術は中国のみならず、中央アジア地域、チベット、ヒマラヤ高原、さらには日本を含むアジアの紙すき職人たちの絶え間のない努力と工夫により発展したことが、残されたコレクションの用紙に見出されている。



 
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