国際仏教学大学院大学
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    平成21年度第1回公開研究会 発表要旨



南 宏信(国際仏教学大学院大学学術フロンティア研究員)


           玄一撰『無量寿経記』の諸本について

 新羅浄土教の僧玄一(七世紀頃)は、諸目録によると、数種類の注釈書を著しており、その中で現存するのは『無量寿経記』上巻のみである。現在は『卍続蔵経』に収録されおり、これは嘉永7年(1854)の書写本を底本にしたものである。ところが、これより時代が遙かに遡れる資料として、書陵部所蔵奈良朝写本や、この書陵部所蔵本を丹山順芸(1785~1847)が転写した巻子本がある。そこで、これらの比較検討の作業を進めた結果、興味深いことが知り得た。
 まずは、嘉永7年本には乱丁や脱落が認められることである。次に『無量寿経記』上巻の諸本は全て首欠であり、これら諸本は同じ系統の伝本であると思われるが、書陵部所蔵本には、他の諸本には見られない冒頭箇所が六行ほど確認できることである。
 従来は、『無量寿経記』が、玄一よりも先輩である法位(七世紀)の『無量寿経義疏』を多く引用することから、全く法位に依っているとの評価しか与えられてこなかった。しかしそれを見直すことによって、『無量寿経記』上巻を再評価していく。
 
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