国際仏教学大学院大学
Home About project Event Publishing Link


  発表要旨   
 

佐藤愛弓(大谷大学助教)

袈裟と女人−『袈裟表相』をめぐる諸問題−

 名古屋市の真福寺に所蔵される聖教『袈裟表相』は、僧侶に袈裟を奉ることによって得られるさまざまな功徳を記し、それを勧める書である。全体に、どのような功徳が得られるのかを具体的に示すことに力点がおかれるが、十種の功徳の第一に「美しい容貌」を挙げることからも窺えるように、とくに女性にこの善行を勧める内容となっている。また冒頭には、袈裟曼荼羅図が付されているが、それと呼応するように、多くの女性の姿が描かれている。
 本文には種々の経典が引用されるが、その引用態度は必ずしも正確なものとはいえず、確かな典拠を見出しにくい文言もある。また袈裟曼荼羅図について、本文中で「延暦二十三年十一月二十八日、大唐において最澄が書写したもの」と説明するが、この事を裏付ける資料はない。
 諸本には、本文の一部が共通する東寺観智院所蔵『大唐袈裟図』があるが、東寺本は真福寺本よりも極端に記事の量が少なく、その関係が注目される。比較すると真福寺本の本文が、女性に袈裟供養の勧めるという要素から、僧が袈裟を着ることの意義を述べる要素へと、やや論点を移して叙述を進めるのに対し、東寺本は女性救済という点を一貫させたものとなっている。
 他に、本文や奥書を一切欠く、曼荼羅図のみのものが、金剛寺に伝えられており、真言寺院に所蔵される傾向が看取される。本発表では、これらとの関係を含めて、真福寺本『袈裟表相』をめぐる諸問題について検討したい。
  
HomeAbout project EventPublishingLink
Copyright 2000-2008 International College for Postgraduate Buddhist Studies