HOME留学体験記ミュンヘン大学  (2025年~2026年)

ミュンヘン大学  (2025年~2026年)

私は2025年4月から2026年3月まで、国際仏教学大学院大学の交換留学制度を利用して、ドイツのミュンヘン大学で一年間、勉強する機会をいただきました。博士論文のテーマを深めることができただけではなく、学会やワークショップに参加することもでき、多種多様な研究に触れ、学問的視野を大きく広げることができました。

(画像:Institut für Indologie und Tibetologie)

ミュンヘン大学ではInstitut für Indologie und Tibetologie で開講されている授業を受講し、Vincent Tournier先生の元で論文の指導を受けました。1年を通して国際仏教学大学院大学の特殊講義に当たるKolloquiumが開講されており、ドイツ国内外のインド学・チベット学・仏教学の研究者の発表を聞きました。文献学だけでなく、インド舞踊・近代のチベット文化・現代のミャンマーの仏教文化など、幅広い研究に触れることができ、仏教が様々な文化的背景の中で展開してきたことを改めて認識しました。7月には私自身も発表する機会を頂き、多くの貴重な意見を頂戴し、新たな視点から論文のテーマを掘り下げる大きなきっかけを得ました。

夏学期は、仏教写本・仏教美術・南インドの碑文の3つの授業を受け、ガンダーラ語の勉強会に参加しました。仏教写本の授業ではこれまで学んだことのない様々な種類の写本に出会うことができました。仏教美術・碑文の授業では、美術的・考古学的な側面から見た仏教教団の様子を知ることができ、仏教研究の奥深さを知ることができました。ガンダーラ語の勉強会では、ガンダーラ語研究の第一人者であるStefan Baums先生の元で写本を読むことができ、とても多くの学びを得ました。また先生はガンダーラ語初心者の私のために個人指導をしてくださり、カローシュティー文字の特徴や音韻変化を丁寧に教えていただき、写本の読み方を伝授してくださいました。どの授業も学生だけでなく研究者やポスドクの方も多く参加されており、活発に行われる議論がとても刺激的でした。

(画像:Institutsbibliothek)

8月にはライプツィヒで開かれた国際仏教学会に参加し、5日間で数多くの発表を聞き、多くの研究者や学生の方と知り合うことができました。また9月にはエアランゲンで開催されたドイツ東洋学会で発表を行い、7月の大学内での発表の時に頂いた意見を踏まえ原稿を作成し、発表することができました。

冬学期はVincent Tournier先生の授業を2つ受講し、それ以外の時間は博士論文の執筆に当てました。一つは先生のご配慮で、私の研究テーマとの関わりも深いSuvarṇabhāsottama-sūtraをテキストとして取り上げていただいた、サンスクリット文献の講読の授業でした。授業内で挙げられる論文の量も多く、予習・復習に多くの時間を費やしましたが、英文論文の読解やサンスクリット語の文法や語彙が鍛えられ、論文のテーマである菩薩についての理解を深めることができました。さらに研究の方法論についても多くを学ぶことができ、とても有意義な時間となりました。もう一つはBhaikṣukī文献の講読の授業でした。他の学生たちと共にBhaikṣukīの文字から学び、文献を読み進めていくのはとても刺激的で楽しかったです。Vincent Tournier先生は仏教全般に対する知識が深く、学問に対する情熱や真摯な態度は、これからの研究生活の中で模範とさせていただきたいと思うものでした。

その他に、7月にはガンダーラ写本のワークショップ、2月にはBhaikṣukīのワークショップに参加する機会を得て、最新の研究に触れることができました。

(画像:Englischer Garten)

ミュンヘンでは幸い大学近くのアパートに住むことができ、毎朝図書館に通って勉強する習慣が付きました。学部の図書館の合鍵を頂き、校舎が開いている時間は自由に使うことができました。また大学の近くにある州立図書館は仏教文献の所蔵も多く、利用することが多かったです。所蔵のない文献もミュンヘン大学のアカウントを通してオンラインで入手でき、研究環境に大変恵まれていました。さらに、大学とアパートのすぐ近くには広大なEnglischer Gartenがあり、気分転換のためによく散歩をしました。

8月の学会の後はベルリンに滞在し、博物館で西域の石窟寺院から収集された仏教壁画などを間近に見ることができました。また長期休暇にはデュセルドルフやミュンヘン郊外にある日本の寺院を訪問し、ドイツの地に根差した生きた仏教に触れることができました。そしてドイツの方々の仏教に対する思いに触れ、これからの仏教のあり方を考えるとても良い機会になりました。

留学で得た学びを活かして、博士論文を今年中に提出できるよう取り組んでいきたいと思います。この1年で頂いた貴重な経験や人との繋がりは大きな財産となりました。これらを糧として、これからも仏教学の研究に真摯に向き合っていきたいと考えています。最後になりましたが、この留学を支えて下さった大学関係者の皆様、留学を受け入れてくださったVincent Tournier先生をはじめとするミュンヘン大学の先生方、私の指導教官でありミュンヘン大学を紹介して下さった幅田先生、事務手続きなどきめ細かいサポートをして下さった事務局の方々に、心より感謝を申し上げます。

 

2026年7月 神山 望

留学中は、さらにRobert教授のご紹介により、Sylvie Hureau教授のご指導を賜る機会に恵まれました。Hureau教授には、私が前年に国際チベット学若手研究者会議でおこなった発表内容について、詳細なフィードバックをいただきました。これにより、日本国内での仏教学的アプローチを、フランスの東洋学研究の視点から再解釈する方法について多くの示唆を得ました。このときの成果として、『金剛場陀羅尼経』チベット語訳の系統に関する論考がまとまり、Jounal Asiatiqueへの投稿準備を進めることができました。帰国前にHureau教授からいただいた「博士論文は研究者としての始まりに過ぎません。これからが本当の研究生活の始まりです」という言葉は、今後の研究への決意を新たにする契機となりました。

3か月の留学期間を通して、CRCAO主催の講演会やワークショップに積極的に参加し、多くの研究者との交流を深めることができたのも素晴らしい経験でした。パリだけではなく、ライプツィヒ大学で主催された国際アビダルマワークショップへの参加も大きな刺激となりました。世界から集まった若手研究者たちとの交流を通じて、アビダルマに関する知識のみならず、私の研究テーマである大乗の陀羅尼思想についても新たな解釈の視点を得ることができたのは大きな収穫でした。

短期間ではありましたが、世界的な研究環境に身を置くことができたことは、研究者としての私の成長に大きく寄与しました。特に、フランスの東洋学研究の伝統的手法と日本の仏教学的アプローチを組み合わせることで、これまでとは異なる視点を見出すことができるという学びは、私の宝物になりました。この留学で構築した研究ネットワークを維持し、今後は自分自身が主体となるワークショップの開催や共同研究プロジェクトにつなげていきたいと考えています。敦煌写本や日本古写経の研究を継続しながら、国際的な研究の場での発表も積極的に行っていく予定です。

(画像:クリスマスのサンルイ教会)

留学で得た学びを活かして、博士論文を今年中に提出できるよう取り組んでいきたいと思います。この1年で頂いた貴重な経験や人との繋がりは大きな財産となりました。これらを糧として、これからも仏教学の研究に真摯に向き合っていきたいと考えています。最後になりましたが、この留学を支えて下さった大学関係者の皆様、留学を受け入れてくださったVincent Tournier先生をはじめとするミュンヘン大学の先生方、私の指導教官でありミュンヘン大学を紹介して下さった幅田先生、事務手続きなどきめ細かいサポートをして下さった事務局の方々に、心より感謝を申し上げます。

2026年7月 神山 望