HOMEお知らせ日本古写経研究所平成29年度 第1回公開研究会

平成29年度 第1回公開研究会

日時

2017年5月13日(土)午後3時~午後4時30分

会場

国際仏教学大学院大学 春日講堂
東京都文京区春日2-8-9
アクセス

発表者

中野 直樹(大阪大学大学院 博士後期課程)
興福寺蔵『高僧傳』巻十三古点について ‐岩屋寺蔵本との比較を通して‐

【発表要旨】

『高僧傳』は、梁代に釈慧皎が、後漢の永平十年から梁の普通三年までの高僧約五百人の伝を録したものである。本経典は、夙に仏教史学、中国史学方面から注目されており、その内容に貴重な情報が含まれていることは今更言うまでもない。本邦では、近世以前のものとして古写本十本、古版本二本、計十二本の『高僧傳』の現存が確認されており、そのうちの四本に訓点が加点されている。
本邦における漢文の訓法は、時代・学統・資料性によって体系がことなっている。したがって、ある本の訓法が訓点加点当時において、また同本の諸本間においてどのような位置にあったのかを見るには、同一本文によって、時代・学統の異なる諸本の訓を比較する方法が有効となる。
本発表では、訓点加点本のうち、発表者が原本調査の機会を得た、興福寺本(巻十三のみ残存)を中心に取り上げる(比較対象の岩屋寺本も原本調査済)。興福寺本の古点は先学によって既にヲコト点・仮名点が整理されており、国語資料として活用されているが、興福寺本の訓点が結局いつ頃の特徴を持っているのかは明確でないのが現状である。平安中期以降、訓法は固定化に向かい、移点が行われるようになる。興福寺本の奥書には康和二年(1100)の年紀が入っているが、これは加点年次であり、当然そこに反映されている訓法は、康和二年当時よりは遡って考える必要がある。
以上を踏まえ、興福寺本と、院政期~鎌倉初期点をもつ岩屋寺本とを用いて両本の訓点を比較し、興福寺本がいつ頃の訓を有しているのか、またどのように読まれていたのかを考察した。
結果は以下の通りである。興福寺本と岩屋寺本の訓法には様々な点で違いがあり、その違いは主に訓法の新古の差である。興福寺本の訓法は最も古いもので平安初期に遡りうるものが含まれ(特に再読字・不読字の読み)、岩屋寺本の訓法は概ね鎌倉期に入ってからのものである。
また、興福寺本と岩屋寺本の異本注記を比較したが、互いに参照したあとは認められないのであって、少なくとも両本の系統間での訓法の参照は無かったと考えられる。

宮﨑 展昌(大谷大学 助教)
『普超三昧経』の日本古写一切経三種および刊本諸大蔵経所収の諸本について

【発表要旨】

本発表では、事例研究として、竺法護訳『普超三昧経』を取り上げ、主に異読の調査にもとづくかたちで、日本古写一切経および刊本大蔵経諸本の相互関係について考察する。
竺法護訳『普超三昧経』は〈阿闍世王経〉の現存する漢訳完本三種の一つであり、三世紀後半に長安にて訳出されたと伝わる。本発表で扱う日本古写一切経は、①聖語蔵経巻、②七寺一切経、③興聖寺一切経の三種である。①聖語蔵経巻所収の同経は「唐経」に分類され、八世紀ごろに中国より将来されたと考えられる貴重な写本である。②③はともに平安末期、十二世紀後半に我が国で筆写された写本一切経である。『普超三昧経』の各古写経所収本に見られた特徴などについて報告するとともに、それらの異読の共有関係から、上述の三種が一つのグループを形成していること、ならびにそれらの相互関係についての検討を試みる。
次いで、上述の日本古写経三種と刊本大蔵経諸本ならびに房山石経との関連について探ることを試みる。まず、刊本大蔵経諸本のうち、江南諸蔵では四巻本構成となっており、三巻本構成になっている他の刊本大蔵経や日本古写一切経のものとは別グループになっていることについて、異読の共有関係なども踏まえて確かめる。同時に、『普超三昧経』の四巻本および三巻本の来歴や由来、背景を探るために、経録類や音義などの事彙類の記述を検討する。さらに、三巻本構成となっている高麗大蔵経初雕本および再雕本の二種、および、契丹蔵にもとづくとされる房山石経、そして、日本古写経の三種について、主に異読の共有関係をもとに、それらの相互関係に関する検討を試みる。

問い合わせ

*参加ご希望の方は、電話、ファックス、葉書または電子メールにて、

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国際仏教学大学院大学 事務局
〒112-0003 東京都文京区春日2-8-9
電話 03-5981-5271
FAX 03-5981-5283
Email nihonkoshakyo14◆icabs.ac.jp(◆をアットマークに変えてください)

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