HOMEお知らせ日本古写経研究所平成23年度 第2回公開研究会

平成23年度 第2回公開研究会

日時

平成23年11月12日(土) 午後3時~4時半

会場

国際仏教学大学院大学 春日講堂
東京都文京区春日2-8-9
アクセス

発表者

岡本 一平 (恵泉女学園大学 非常勤講師)
金剛寺蔵古写本による『大乗義章』の成立と編纂とテキストについて

【発表要旨】

国際仏教大学院大学の研究プロジェクト、「東アジア仏教写本研究拠点の形成」では、前プロジェクトを継承しながら仏教写本研究を推進している。その中で、中国を代表する仏教思想家の一人、浄影寺慧遠(523-592)の主著とされる『大乗義章』の院政期写本が、天野山金剛寺(大阪府河内長野市)から発見された。全20巻の内、16巻分である。
これまで『大乗義章』の古いテキストは、『大正蔵』44巻の底本となった江戸版本しか一般には知られていなかった。この度の発見は、『大乗義章』の原テキストについて考える契機を与えるものである。従来の『大乗義章』研究においても、その成立と編纂に疑問は提示されていた。しかし、一種類のテキスト(江戸版本)を前提にしていたので、現行本の問題点が論究されることはなかった。そこで、本古写本を活用して、『大乗義章』の成立、編纂、原テキストについて考えてみたい。
検討する主な項目は次のようなものである。 ①撰者号、②目次、③項目数、④配列順序、⑤編纂者、⑥作者、⑦研究史など。

小田 壽典 (豊橋創造大学 名誉教授)
偽経本「八陽経」写本からみた仏教文化史の展望

【発表要旨】

『仏説天地八陽神呪経一巻 トルコ語訳の研究』(2冊 京都 法蔵館 2010)において、いわゆるウイグル仏教といわれるトルコ語仏教の言語文化史的研究を目指した。方法論としてこの経典を選んだ理由は、多くの写本(断片)の存在が予測され、言語資料として十分に足るものと考えたからである。しかも重要なことは、中国仏教の影響が及んだ儒教・道教文化圏に、すなわち日本、朝鮮、越南、敦煌およびトルファンに漢語原典、またさらに、チベット、西夏、モンゴル語訳本の存在が明らかになり、写本や版本の内容変化は、経典伝播の道筋をたどることができるのである。おそらく、トルコ語訳は西ウイグル国のトルファンで翻訳されたと推測し、トルコ語訳者は「突厥(テュルク)語」の担い手であったと結論した(『史学雑誌』5月号、257頁参照)。
ここでは、経典伝播の具体例を取り上げて話題としたい。以下写本等の伝播仮説図(PDF)と二三の具体例を列挙する。

  1. トルファン出土漢語写本(ベルリン所蔵本Ch366v)に見いだす§1173「遠屛他方」、§1184「若欲遠行從軍」は朝鮮本の校異にのみ一致する。これは朝鮮本の源流が遼朝仏教にあることを推測させる。
  2. 越南写本(天七・天八)は巻末の「涅槃樂」の本文に続けて偈文をおく。
    「爾時世尊 欲重宣妙要語 而説偈曰」とあって、木村淸孝氏が発見された敦煌蔵経洞の八陽経写本(北京本7624・鱗9)と同類の偈文がある。越南本の源流がここに求められるかもしれない。
  3. 敦煌写本の偽作
    佛説天地八陽神呪經行者王題記(年次未詳、大約十世紀)。(池田温 1990:519頁 下段2477番)は、内容の上から、八菩薩の順序が敦煌本は他と異なる(§1546/§1547)。「卽從座起(§1577)」は敦煌本に存在しない。つまり前三分の二は他本の借用であるとみたい。
  4. モンゴル語訳の課題。題名につぐ通序のなかで、原本に存在しない釈尊の五比丘、魔訶迦葉、舎利弗、魔訶目犍連、そして三迦葉の名をあげて同席をたたえる。この挿入文(北京版本2b13-2b16)には、チベット語からの借用を示唆するモンゴル語表現に出会う(Mong. teyin böged < Tib. rnam-par, rnam pa kun-tu: perfectly完全に,see Jäschke, p. 314)。

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国際仏教学大学院大学 事務局
〒112-0003 東京都文京区春日2-8-9
電話 03-5981-5271
FAX 03-5981-5283
Email nihonkoshakyo14◆icabs.ac.jp(◆をアットマークに変えてください)

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