HOMEお知らせ日本古写経研究所『続高僧伝』テキストの変遷
-写本から刊本へ- 

『続高僧伝』テキストの変遷
-写本から刊本へ- 

平成25年度シンポジウム発表要旨
池 麗梅(鶴見大学 准教授) 

『続高僧伝』は、中国南山律宗の開祖としても知られる唐代の仏教史家道宣(596~667年)が、6世紀初頭から7世紀中頃までに活躍した高僧たちの事跡を集めて著した伝記である。従来の『続高僧伝』研究を難航させてきた原因の一つは、その成立にまつわる複雑な事情にある。すなわち、道宣の序文によれば、同書は、南朝梁慧皎の『高僧伝』(仏教初伝以来、519年までの高僧の伝記)を継ぎ、唐貞観19年(645)までの144年間に活躍した高僧について、正伝だけでも340人分を収録しているという。しかし、現行の諸刊本大蔵経本を見る限り、『続伝』が収録する伝記の実数は、著者本人が序文で告知した総数よりもかなり増えており、また、著作が完成したとされる紀元645年以後の記事も存在し、あまつさえ道宣死後のできごとにまで言及されているのである。こうした種々の齟齬の存在から、先学は『続高僧伝』が現行本の形態に至るまでに数段階の増補・編纂が行われたと想定した。
本発表では、諸刊本大蔵経または日本古写一切経に含まれている『続高僧伝』の現存諸本から代表的なものを数種取り上げて紹介した上、それぞれの系統の特徴および諸系統間の相互に見受けられる関連性について指摘することによって、『続高僧伝』のテキスト増補・編纂の過程を辿る。その際には、特に『続高僧伝』巻27所収の「僧崖伝」を典型事例として取り上げ、『続高僧伝』の成立過程およびその複雑な変遷経緯の軌跡を辿らせてくれる種々多様な現存伝本に関する新知見は、大蔵経の成立史という仏教文献学においてどのような意義があるのかも併せて解明に努めたい。

お知らせNews

月別
アーカイブArchive